風野真知雄／水の城 いまだ落城せず

水の城―いまだ落城せず 新装版 (祥伝社文庫)

以前『のぼうの城』を読んだ時に、同じ忍城攻めを題材にしたこの本の存在を知って、そのうち読もうと思っていのだった。やっと読んだよ。
どうしても『のぼうの城』と比べながら読んでしまうな。『のぼうの城』はそれぞれの武将をかなりキャラ立ちさせて漫画的に話しが展開していくのに対して、こちらは武将はほとんどクローズアップされていないけど成田長親の目線で戦いの機微が細かく描かれていて、「小説」としてはこっちの方が面白かった。
石田三成の水攻めの土手が決壊した背景や、圧倒的に不利だった忍城が闘いに持ちこたえた背景も説得力がこちらの方があったかな。特に、水害の多い地域で水攻めを行なっても土地の人々への精神的な打撃は弱かった、むしろ人為的に災害を起こされたことに怒りを抱かせることで忍城側を奮起させる結果になったという筋書きは、なるほどな、と。
一つ苦情を言うならば、文庫本の表紙裏に作者の髭熊面がででんとカラーで載っていたのはちょっと・・・インパクトありすぎて・・いただけない。